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私家版用語辞典を作る理由

なにかを考える上で注意すべき点の一つは、判断のロジックの中に意見が入らないようにすることである。ロジックは事実を積み重ねていくべきモノなのだが、いつの間にか思い込みといった固定観念や希望的観測、正当化による事実の誤認といった“意見”によって汚染されてしまうのでその排除に心がけなければならない。

そして注意すべきもう一つの点は、言葉の選び方である。私たちは言葉を使って考えるが、その際に言葉の持つイメージに知らず知らずのうちに縛られてしまっている。また場合によっては思考の誘導を受けてしまっている場合がある。例えば同じ事実のはずなのに新聞各社の言葉の選び方が違うために異なった印象を受ける場合がそうである。

言葉のイメージによる縛りを外す方法の一つは“ラベル剥がし”という手法である。コーチングやカウンセリングの手法の一つに“ラベリング”というのがある。ラベリングとは「名前(ラベル)」をつけることで、曖昧な物をはっきりとした概念に変える方法であるが、ラベル剥がしはその反対に「名前(ラベル)」を剥がすことである。

ラベルを外す方法の一つとして別の言葉への言い換えがある。

「バベル17」というS Fの古典では、ピンチに陥った言語学者である主人公が、同じ言葉を様々な言語に置き換え、言い換えた言葉が持つニュアンスをヒントにして脱出方法を考えだすというシーンがある。例えば「円」というと「円」の形そのものをイメージされるのではないかと思う。そこで「円」を例えば「丸」に言い換えると、人によっては“丸いモノ”や“曲線の軌跡”をイメージされるのではないかと思う。そして同じcycleでも「サークル」と読めば、“(人の)塊り”をイメージされるだろし、「サイクル」と読めば“車輪や回転するモノ”をイメージするだろう。様々な似た言葉(=類義語)に言い換えることで、言葉のイメージが持つ縛りから抜け出す方法である。

もう一つは、ダイレクトにそのものをイメージを思い浮かべることである。例えば「机」ではなく、“一枚の板に脚がついたモノ”とイメージする。そうすると不思議なモノで同じ机でも「デスク」や「テーブル」に見え始め、さらには「椅子」や「ベッド」にも段々と見えてくる。

コンサルティングやコーチングでは、今までとは違った発想・ものの見方が求めれらることが多いので、このラベル剥がしの手法は私の中では良く使っている。

言葉のイメージによる縛りを外すもう一つの方法として重要視しているのは私家版用語辞典を作ることである。経営に関する言葉には、意味が曖昧なまま使われているものが多い。そして曖昧なまま使われているがゆえに、いつの間にか間違ったイメージを持ち、それに縛られるがゆえに間違った判断をしてしまっている場合がある。

例えば、「付加価値」という言葉ある。付加価値の定義は会計用語では、簡単にいうと“企業努力”であり、とマーケティング用語では“売り手・買い手が得られる利益(恩恵)”であり、全く違うモノになっている。本来、付加価値のある製品についてかんがえる場合の「付加価値」はマーケティングの定義である。つまり、買い手にとって恩恵がある(そして、売り手にとっても利益が見込める)製品の開発や売り方を考えなければならないのである。が、販路開拓が苦手な企業様の多くは会計の“企業努力”と考えているがゆえに、製品の機能(※)や開発で苦労した点をアピールしようとしてドツボにハマってしまっている。

※:買い手にとってメリット(恩恵)がなければ、いくら優れた機能を持つ製品だったとしても売れることはない。したがって機能の説明に終始することは間違ったプレゼン資料となる。

そのほかに最近よく使われつつある「ガバナンス」がある。「企業統治」と訳されることが多い言葉であるが、元々の意味は「船の舵取り」である。ガバナンスとは“会社をうまく舵取りしていく”のが本来の意味だと考えるが、「統治」の意味である“支配し治める”に縛られると間違った判断に繋がる可能性があると考える。

経営に使われる言葉の多くは曖昧なまま使われているので、言葉を使う際には、本来 辞書で調べて意味を理解しておく必要がある。私は師匠から修行時代に辞書に書かれている言葉の意味が難しく腑に落ちない場合があるので、自分の言葉で説明した辞書を作るようアドバイスをいただいた。最近一から作り直しているので、アップした言葉の数はまだまだ少ないがホームページには私家版用語説明を作っているのでご覧いただければ幸いである

  

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