我々は実力が発揮できないように育てられる
銀行に創業融資を頼みに行ったが断られた。どうしたらよいか?という相談があった。
相談者は断られてそのまま帰ってこられたようであるが、相談を受けていて思ったことは、「なぜ相談者は銀行でゴネなかったのだろう」という思いであった。
ゴネるというと言葉が悪いが、相談者にとって自分の将来を左右する話である。
融資額が大きすぎるのか?担保が足りないのか?事業計画の完成度が低いのか?どういう条件であれば融資してもらえるのか?
素直には教えてもらえないかもしれないが、少しは喰らいつくつもりで動かないとなに一つ前進しないまま終わってしまう。創業で成功する人とそうでない人の差はそこにあるのではないかと考えている。
家に帰ってきてHDDの古いデータを整理していたら、次のようなメモがでてきた。
”なぜ人は受け身なのか?
子供のころ教育される過程で受け身であることを強要されるからである。
理由1:子供が自由に積極的に動き回ると親はコントロールできない。
理由2:親自身もそうやって育てられてきたので、そのことが正しいと思い込んでいる。”
自動車は時速180km、200kmで走る能力を持っている。もし全ての自動車がその能力を遺憾無く発揮したとしたら、そこらじゅう事故だらけで社会はとてもギスギスしたものになるだろう。
同じように全ての人間がその能力を遺憾無く発揮したとしてら、社会はさまざまな人々の軋轢によって成り立たなくなってしまうだろう。
なので、私たちは、育つ過程で、自分の実力が発揮できないように様々なリミッターを課せられている。
社会が求めているのは、集団の中で従順に生きる”子羊たち”である。
ただ、創業し独立するということは、集団を離れ一人で生きていくということである。”子羊”では生きていくことができない。
一匹オオカミというと食べられる存在から喰らう存在というニュアンス(※)が入ってしまうので適切な表現とは言い難いが、成功するには課せられたリミッターを外し強くならなければならない。
※「信者と書いて儲(もうけ)と読む」とは古い冗談(冗談と言えない報道が最近多いが・・・)。儲けをだすには、信者(会社・製品のファン)を獲得しなければならないという意味だった?と記憶しているので、喰らう立場になるというのはあながち間違いだとは言い難い。
アクセルとブレーキ
今回下記の表をつくってみた。私たちに課せられているよくあるリミッターを言葉の視点からまとめ直したものである。もし”〜しなければならない”という発言が多いようであれば、あなたの行動は相当ブレーキがかかった状態であるということ。
普段自分がブレーキとなる言葉を使っていないかチェックしてみてほしい。もしブレーキとなる言葉が多いようであれば、アクセルとなる言葉になるよう普段から注意していってほしい。
イチロー選手や大谷選手のインタビューをテレビで拝見すると、彼らの発言のほとんどはアクセルとなる言葉でできている。
アクセル | ブレーキ |
Want 判断基準は”やりたい”かどうか。失敗を恐れず、可能性に挑戦し続ける。 | Must 判断基準は”しなければならない”。周りから強要される義務に応えようとするもの。モチベーションは低く、さらに義務に応えることができた瞬間、そのモチベーションはなくなる。 |
Will(意志) 「自分は人間的にどう成長したいのか」「どうなりたいのか」「どうすればよいのか」未来(目的達成)に焦点を当てて考える。一つのゴールを達成すれば、次のゴールに向かって走り続ける。 | 過去形 「なぜそれをしようとするのか」「なぜうまくいかないのか」と過去の体験を起点として考える。ゴールを達成すれば、そこで満足し、現状に甘えるようになる。 |
DO動詞 やると決めたらすぐに行動に移す。考えながら動く、もしくは考える前に動く。とりあえず行動する。条件は行動しながら揃えていく。色々と失敗を繰り返すかもしれないが、確実に前に進むことができる。 | BE動詞 どういう結果になるか調べ、分析し考察してから動く。条件がそろったらやる。まず条件をそろえようとする。もしくは周りの出方を見てからやるかやらないかを判断する。できない理由が先に出るのでどんどん引き伸ばすようになる。 |
Hope(get) 希望があるときモチベーションはあがる。物事のポジティブな側面に焦点を当て、希望の実現に必要なものの獲得(get)を目指す。 | Afraid(avoid) 自分が傷つくことを回避し、不安やリスクを避けることでモチベーションがあがる。不安や恐れに焦点があたりネガティブにものごとを捉え、失敗を恐れ何もしないか、少しでもマイナスな要素を避けようとする。 |
Enjoy なにかをするとき、それが達成されたらどういう結果をもたらされるのか、達成された後のことに焦点が当たり、最終的な目的、生きる目的を達成することに喜びを感じる。また、良い自己訓練を習慣化しそれを楽しみながら実行していく。 | Pleasure 何かをやろうとするときに、その場の楽しさやワクワク感などの感情、不安や恐れを避けることなど、体験の途中に焦点があたり、人間的な感覚を重視する。目標が漠然としており、気まぐれで場当たり的な行動になりがち。 |
能動態 他人の評価はどうでもよく、自分がやりたいからやる。うまくいったかどうかは自分で判断で行い、実現する方法や選択肢、ルールを自分で編み出していく。 | 受動態 賞賛や承認など他の人が「認めてくれたら」うまくいったと判断する。他者と比べて自分が優れた状態になることを目的とする。また、うまくいく方法を外部から与えられることを望む。 |
自信と誇り うまくいかない時、うまくいかない現実は認めるが、その原因として自分自身を否定しない。うまくいっても、いかなくてもそれはそれ。自分自身はどんな自分でもOKである。 | 恥と自己否定 うまくいかない時、うまくできない自分そのものを否定する。(うまくいっている時は、増長する、もしくは自分みたいな人間がうまくいくはずがないと自分を否定する) |
今井 彰.(→プロフィール)
Con(隣に)+sult(座る)+ant(物)・中小企業診断士
兵庫県尼崎市を中心に活動しているコンサルタント。あえてcon(ともに)+sult(座る)+ant(者)と名乗っている。なぜなら、“どうしたんだい?”と言って悩んでいる人の隣に座り、一緒になって考えたりアイデアを出したりするのがコンサルタントの本来の姿だと考えるから。対応範囲は小売飲食の売上向上策から製造業の販路開拓まで、またそれに付随する人材育成。30年以上に渡り、モノを売る技術(買う気・やる気の作り方とその伝え方)について実践の中でノウハウを培ってきた。同志社大学商学部卒。
- コーチングマネジメント (6)