経営と戦略

辞書を調べると“経略”と言う言葉が出てくる。意味は「四方の敵を平定し、天下を治めること。また、国を治めること。(大辞林)」である。

ここで“経”とは「そうあるべき(物事の)正しい筋道、時代をたてに貫いて伝わる不変の道理を通すこと。転じて物事の大筋をたてて処理をする、管理をする。」と言う意味である。いわゆる一本筋を通すというときの“筋”である。理念・哲学・原理という意味合いが強い言葉である。そして、“略”は「(横断的に)筋道を考える」ことである。どうやったら実現できるか見通しをたて、手順を考えることと言える。国家を治めるとは、通すべき縦の筋道が明確にし、横の筋道(現実への対応策)を考慮することなのだろう。

経営

元々の意味は、“土地を測って縦線(経)と外枠の線(営)を引く(書経)、転じて土台をすえて建設をする(室町時代)。事業(世の中をおさめる仕事・正しい行い)を営むこと(詩経)”である。明治時代になって、administration(統治、執行、運用・統括)の訳として使われるようになった言葉である。現代では、「方針を定め、組織を整えて、目的を達成するように持続的に事を行う事。」と言う意味で使われている。“経”と言う漢字の意味を強調するならば、経営とは、正しい筋道(理念、その具体的な体現である会社=組織、システム)を作り上げて行く、国(組織)を治めることと言えるだろう。

戦略

幕末に西洋式軍隊の導入とともに輸入された概念(※)で、ストラテジー(strategy)の訳である。

意味は、「長期的、全体的展望に立った闘争の準備・計画・運用の方法。(大辞林)」であり、「戦闘部隊が有利な条件で戦場にのぞめるように全体を構成する策略であり、戦闘における勝利を最大限に利用すること(「戦術と指揮」松村劭著)である。判りやすく言えば、どうしたら達成できるか見通しをたて、目標までの手順を考えることであると言えるだろう。

ちなみに戦術(戦場において戦闘に勝利する術である。:「戦術と指揮」松村劭著)とは区別されなければならない。

※西洋でも戦略という言葉が本格的に使われるようになったのはナポレオン戦争の時代(1799~1815:日本では江戸後期)からである。幕末から明治初期にかけてナポレオンの情報は日本に大きな影響を与えた。

このように考えると、経営戦略とは、まず“経”(縦の筋)を設定したのち、“略”実現のための方策を考えることと言える。

 

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