感情(情動)
例えば大辞林では、情動は感情の一部(※1)と記載されており、一般的には感情と情動ははっきりとは区別されていないようである。
しかし、多くの心理学の書籍では情動とは、古い脳(主に大脳辺縁系)で行われる感覚刺激への評価の結果起こる生理的反応や行動反応などのことであり、感情とは、体に起こった生理的反応や行動反応を新しい脳の一部である前頭前野(※2)で認識したものと定義されている。
例えば、ネズミは「敵」の存在に気づいた瞬間、身体を硬直させ動かなくなる(これをフリージングという)、もしくは交感神経を興奮させ、闘争もしくは逃走の行動を反射的に起こす(つまり情動反応が起こる)。この体の反応を脳の前頭前野が感じ取って、自分は“恐怖”や“怒り”という感情を感じていると認識していると情動と感情は別物と定義している。
また、このことから次の2つのことが言える。
瞬間的にカチンとくるのは情動反応なのでコントロールはできないが、怒りの感情は理性が認知した結果なので、怒り続けるかどうかはコントロールすることができる。例えば“怒り”の情動反応は防御反応なので、怒りの感情を感じた時に、「自分は何を守ろうとしているのか」を明確にして“正しく怒ろう”とすると意外と冷静に対処できる(とは言え、情動反応が収まった訳ではないので、家に帰り夜中独りで暴れていることはある)。
顔の表情の変化は、情動による反射的な反応であるため、こちらの提案を相手がどう感じたかは、その表情の瞬間的な変化から読み解くことができる。腹芸が得意で感情を隠すことが上手い人でも、瞬間的には目や口元の表情には変化が現れる(ただし、無意識的な変化なので、そのことを相手に指摘しても否定される)。
※1情動:感情のうち、急速に引き起こされ、その過程が一時的で急激なもの。
怒り・恐れ・喜び・悲しみといった意識状態と同時に、顔色が変わる、呼吸や脈搏が変化する、などの生理的な変化が伴う。情緒。(大辞林)。
※2:前頭前野はヒトをヒトたらしめ,思考や創造性を担う脳の最高中枢であると考えられている。(脳科学辞典:https://bsd.neuroinf.jp/wiki/前頭前野)