コスト・費用・資本・資産

経営者なら明確に意味の違いをわかっていなければならない言葉。

コスト(cost)

  • 商品や製品を生産するために費やされたモノ。原価。生産費
  • 物の値段     (大辞林)

コストの原義は(犠牲を伴う)代価、代償。

同じ言葉でも、会計の分野とマーケティングの分野で意味が違うことがあるが、コストもそうである。

会計用語としてのコストは“原価”という意味で使われる。ちなみに原価とは“製品の生産。販売に要した費用を単位あたりに計算した価(大辞林)”である。つまり、製品一個当たりに費やされた金額のことである。

一方マーケティングの分野では原義の“代価・代償”の意味合いが強い。それを得るために犠牲にしたもの全てが対象となるので、お金意外にも費やした時間や心理的負担といったものもコストに含まれる。

費用(expense)

  • ある事のそのために必要な金銭
  • ある生産活動のために消費される金銭。すなわち生産要素。生産財に支払われる対価   (大辞林)

expenseの原義はex(外へ)pense(支払われること)である。コストが一個あたりに費やされる金銭なのに対し、費用は支払われる金銭の総額のことである。

資本(capital)

事業の元手となる金。また、比喩的に仕事や生活を維持してゆく収入の元となるものをいう。(大辞林)。

経済学と会計とでは意味が違う言葉。経済学の分野では運用形態としての資産及び資金を指すことが多いのに対し、会計の分野では、調達源泉(特に自己資本)を指して言うことが多い。

資産(asset)

  • 金銭や土地・建物・証券などの財産。
  • 企業が所有し、その経営活動に用いる財産 (大辞林)

元々会計では、“会社に帰属し、貨幣を尺度とする評価が可能で、かつ将来的に会社の収益をもたらすことが期待される経済的価値”を意味する。

会計では「貨幣を尺度とする評価が可能」なものしか取り扱えないので、土地・建物・証券などの財産(※)などが資産として取り扱われるが、経営全般の判断としては、資産とは「将来的に収益をもたらすと期待される価値」であるので、ブランドやノウハウといった知的経営資産までも含む。

ちなみに社会学では、資産(自分に投資して得たもの)として次の4つを挙げている。

1.土地・株などのいわゆる資産

お金、土地、財産など金銭的な利益を得るために使われる資産。

2.知識・情報

学歴、実務職業経験など収入に繋がるものだけでなく、教養、趣味のよさ、TPOにあった言葉遣いなど、社会地位の向上や他人との差別化につながる資産。

3.人脈・人間関係

いわゆる人脈。特定の集団や有益な人物とのつながり。

4.その人の魅力

美人・イケメンといった外見容姿から社交的、信頼に値するといったその人の内面的な魅力、評判・周りからの評価など、その人の魅力。

社会学で言う資産形成とはこの4つをぐるぐると回すことである。例えば、夜の蝶と言われる職業の人は、まず、自分の魅力を磨き、話題(知識。情報)を仕入れ、場合によっては人脈を作ることで金銭を得ている。そして得た金銭を自分磨きや話題の収集などに再投資しさらに魅力的な存在となることでナンバーワンに上り詰めていく。

また事業承継の際に後継者が引き継ぐ会社の資産は次の3つであると規定している。

資産の継承

・事業用資産(設備・不動産等)

・資金(株式・運転資金等)

人の継承

・経営能力(後継者の育成)

・従業員の雇用・モチベーションの維持

・魅力的な社風・企業文化

目に見えにくい経営資産の継承

・熟練工が持つ匠の技

・特許・ノウハウ

・許可・認可・認証

・営業秘密

・顧客情報

・得意先担当者との人脈

・経営理念

・社長の持つ信用など

※本来、「生産活動のために消費されるモノ」を費用と言い、「将来的に収益をもたらすと期待できるモノ(将来の収益の源泉)」を資産という。例えるならば、使用し最終的には廃棄される事務机は費用であり、将来値上がりが期待できる社長室にあるアンティーク机は資産となる。ただし、会計には1年ルールというものがあり、費用は1年間で費やされたもののみとなる。したがって、1年以上の期間にわたり在庫されている部品や長年に渡り使用される設備や建物は資産として計上される。(ざっくりいうと、将来(2年目以降)の収益の源泉とみなされる)

 

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